MESSAGE

メッセージ

Vol.4:社長の発言、無視をするのも社員の個性。

「社員というのは喜ばないもの」だと思っているリアライズ代表の砂田浩志。発言を無視されることもあるという。それも個性だからと笑う砂田だが、本当は寂しいし傷ついている? 口下手なのかシャイなのか、本当に気にしていないのか。代表が本音で語る社員への想いを聞く。

ー『社員は喜ばないもの』と思い定めてしまったそうですが、社長自身は喜んでいる姿を社員に見せますか?

どうなんだろう。見せたことがないかもしれません。そもそも、僕って喜ぶことありますかね。

ーこっちが聞いてるんです。新しい受注したとか、社員のスキルが上がったとかは喜ばしいじゃないですか。

スキルが高くなったとか、いい仕事だなと思ったときには、本人に伝えることはあります。でも、大きな仕事とったとかは、ディレクターたちとは共有できるけど、デザイナーたちにとっては「知ったこっちゃない」なんじゃないですかね。

有名企業の案件だとか、売上が大きい仕事とか、社長としては嬉しいことですけど、社員たちは経営のことまで考えて仕事していないと思います。逆に、「忙しくなるのか」ってネガティブに受け取られる気がして。

ー大きな仕事を担当したら、誇らしい気持ちになるものでは?

いや、ウチのスタッフにはないです。そこそこ有名な仕事を受注したから、「やりたい人いる?」ってチャットに送ってみたことがありました。でも、返事がない。ただただ、無言……。

ー理由があるんじゃないですかね。他の案件で手一杯とかスキルに自信がないとか。

チャレンジしたい人がいれば、他の仕事を調整することはできます。スキルが足りないのなら、納期を伸ばしたり、スキルの高い人をサポートにつけますよ。

挑戦する権利を行使しようとしない。ただそれを、一概に悪いことだとは思っていなくて。そういう人種なんだと思うんです。世代というより、リアライズに集まるのは、そういう考え方の人たちなんだと。

ーなるほど。そういうのも個性だし、リアライズらしさだと思っているんですね。社員の人がリアライズで働き続けている理由も、そういう『らしさ』に惹かれているから?

ホワイトだから、じゃないですか。

ーリアライズはホワイト企業だ、と。じゃあ、ちょっとホワイト自慢してみましょうか。

まず、残業がほぼないこと。『ほぼ』なので、つまり多少はあるんですが、どちらかというと社員のほうから「やらせてくれ」って。

ーやりがい搾取感が漂うブラック企業じゃないですか。

たとえばデザイナーに多いのは、「キリが良いところまでやりたい」っていう声なんです。確かに制作をしている途中で、「あと少し、ここだけやるとキリがいいんだ」っていうときもあるでしょう。

ただし、定時から1時間以上、20時は超えないでくれと頼みます。1時間あっても終わらないとしたら、それはキリが良いところではないと思うので。

それでも20時を超えて残業してしまった場合は、インターバル休暇というのを取り入れていて、翌日の始業を遅らせてもらってます。結果として、月間20時間以上の残業を発生させない仕組みなんです。

ー長時間残業をしてまで、成果を追い求めて欲しくないということですか?

成果は出して欲しいです。でも、時間をかけて仕事ができる人はいっぱいいます。そうじゃなくて、スピードもクオリティも、同じ条件で発揮してほしい。夜中まで働いてカバーするという考えではなく、良い仕事を早くできるようになるんだ、ということを理解して欲しいんです。

ーこっそり家で仕事をしていたら? 評価を下げるとか。

見つけたら許さなくて、やらないで欲しいと伝えますね。とはいえ、仮に仕事を持ち帰っていても、評価を下げるつもりはありません。逆に、残業してクオリティが上がっても、残業してるから評価はできない。

業務時間外で仕事のことをやるなら、スピードなりクオリティを上げるための訓練を自分でやって欲しいんです。やり方や考え方を変えてもらう。方法がわからないとしたら、それこそ会社なので、できる人に聞いたらいいじゃないですか。

ーせっかく会社に属しているわけですからね。他にホワイトなところは?

社内の会議はやりません。必要な情報共有は、オープンなチャットでやります。個別の案件以外は、全体に共有して、欲しければ情報にアクセスできるように。

あと、飲み会は強要しません。僕だったら絶対に嫌なので。好きな人たちとだったら行きたいです。勉強になったり単純に楽しかったり。無理やり行かないとならないっていうのは、誰も喜ぶ話ではないですから。

……そもそも、「全体で飲み会をやりたい」という声はないんですけどね。

ー砂田さんの嫌いな評価は?

評価のシートみたいなのは書かせませんし、目標も立てない。成長したい人と、現状でいい人がいるわけで、全員に目標を立てさせるのはナンセンスだと思います。

ー一人ひとりがどちらに属するかは把握してるんですか?

成長したい人、目標を立てて取り組みたい人は、言ってくれないとわからないですね。ですから、個別面談のときにそれとなく聞いてみます。入社して1ヶ月後と年に1度、面談をさせてもらっているので。

ー一対一で話す機会があるんですね。そこではどんな話題を?

基本は仕事の話ですね。仕事量はどう? とか。そこで、「もっと難易度の高い仕事をくれ」と言われたことはないです。だいたい「特にないです」って。パソコンのスペックとかも充分なのか、要望されることはありません。

だいたいのケースが5分くらいで終わってしまって、あとは僕の話をしてます。バイクが趣味なのでツーリングに行ったとか。

でも、これも無理やり聞かせている感じになると良くないので。相手の趣味の話とかも、なかなか聞き出しにくいですね。社長に聞かれたから、「プライベートなことだけど答えないといけない」と思われたくなくて。

ー本当は趣味の話とかしたいけど、砂田さんはシャイだから言いにくい?

シャイというか……気を遣っているんだと思います。僕がぽろっとチャットに投げたことに反応してくれる、たとえば「バイクを買い換えた」と発言したときに、「何に乗ってるんですか」と聞かれたら嬉しいです。

でも、そういう関係を全員に求めるのは違う。「社長の話だから」「社長に聞かれたから」みたいな、強制になるのが、僕がもっとも嫌いな会社の関係なので。

ー社長というのは置いといて、個人の砂田浩志としては話をしたいんですね。

うーん。個人ということなら、そんなに興味はないかもしれません。むしろ社長だから、会社として、働いているみんなが充実してるのかを知りたいんです。

いまはフルリモートで働いてもらえるんですが、仕事以外にしても外出はしにくいじゃないですか。「コロナで出掛けられなくて大変だね」って言うと、「趣味がゲームなんで大丈夫です」とか答えてもらって安心することもあります。

でも、それ以上は掘らない。僕、どうせ広げられないですし。

ー気苦労が多いんですね。でも、そういうのって伝わってますか? たとえばチャンスがあることとか。

それはそれで、こちらからだと強制になるかもしれないので。「こういう仕事、ポジションがあるけどどう?」って言われたら、従業員としては断りずらくないですか?

「嫌です」と言った時点で他のオファーもこなくなる、断ったらリアライズで働きにくい、みたいに思われたら。良かれと思ってオファーしたことが、マイナスに作用する可能性を考えたら、言えないことのほうが多いんです。

ーこのインタビューを読んだ社員が、要望をたくさんしてきたら? ムッとしたり、昇給だなんだに影響しないことは約束できますよね。

「本当に言っていいんだ」となったら嬉しいですから、不利にならないことは約束します。同時に、お互いがイーブンであるためにも、要望を必ず実現するという約束はできない、ということも宣言しておきたいです。

どれだけ要望をしてもかまわないけど、必ず叶うわけではないということは理解してもらえたら。それなら双方にとって、要望し合うことが苦痛にならないと思うんですよ。

ー手を挙げる、声を上げる、黙々と任された仕事をする。そのどれもが、自由に選べる会社でありたいということですかね。

そうですね。できるだけ長くリアライズにいて欲しいと思っていて。制作会社に限らず世の中に会社はたくさんありますけど、僕は、他の社長よりも社員のことを思っている自信はあるんです。

社長が発言してもスルーされるって、嫌だと思う経営者もいるでしょう。でもそれは個性であって、みんな違うし、画一的な線を引くとかしたくない。クチで言うのは容易いですが、本当に実現しようと考えている会社って少ないんじゃないかな。

手前味噌になっちゃいますけど、他の会社に行ったら不幸になるかもしれない、ウチにいてくれたら現状の幸せは約束するから、って言えてしまうんですよ。

ー「社員にどうしてあげたいとか考えない」とおっしゃってましたが、意外と考えているんですね。社員に伝えることをためらうくらい、気を遣っている。「自分で言うのはちょっと」とか、「強制と思われたらどうしよう」とか。たぶん砂田さんは、社長として強くありたいって意味で、格好つけてしまったり、社員たちに嫌われたくないんだなと感じました。制作会社って特色を出しにくいですが、深いところで特徴がある会社になってますね。