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VOL.03

Vol.3:社員には、昇給したくないという権利もある。

設立から1年半が経過し、入社した人材が定着するようになった。少しずつ社員が増えてきて会社らしくなったリアライズだが、代表の考えはブレない。自分が会社員時代で経験した嫌なことを、自社から一切排除する。顕著な例が給与に対する考え方だ。リアライズでは、どのような基準に基づいて昇給がなされるのか。仕事と金に関する、独自の理論を聞く。

INTERVIEW

  • 働き続けてくれる社員に対して、どんな思いがありますか。こんなことをしてあげたい、とか。

    砂田

    正直なところ、社員にどうしてあげたいっていうのは、起業してからずっとなくて。ただただ、自分が会社員時代に嫌だと感じたことをしないというだけなんです。

    逆に、社員のほうから要望があるかというと、本当に、極々たまーに。

  • 限りなく少ないみたいですけど、これまでに寄せられた要望とは? 椅子が硬いとか、加湿器が欲しいとか、給料をあげてくれとか…

    砂田

    椅子は、希望する社員にはそこそこ値段のするやつを揃えました。社員たちは座り仕事が中心なので、椅子くらいは良いものにしようって。加湿器は……僕が自主的に買ったのかな。社員からの要望とかじゃないような気がします。

    給料を上げてくれって言われたのは、これまで一回だけだったかな。

  • 昇給の希望、あったんですね。どうしたんですか?

    砂田

    本人の希望を聞いて、僕からは「こういう風になったら上げられるよ」という話をしました。社歴が長くなったからとか、年齢が上がったからという理由で昇給はしませんと。

    どのような状態になったら昇給するかを伝えて、チャレンジするかどうかは自分で決めてください、と。結果、チャレンジしたいということだったので、一緒に目標を決めて取り組んでいくことにしました。

    そもそも僕は、給料の考え方って人それぞれだと思ってるんですね。何もしないで上がるわけはないので、スキルが高くなって成果が出せるから昇給する。ただし誰しもが、スキルアップしてまで昇給したいわけじゃないだろうと思うんです。

    世の中には成長神話というか、「人は成長するものだ」「成長を目指すのが当然だ」みたいな流れがありますよね。僕、あれがすごく嫌いで。違和感しかない。

    「給料は充分だから、これ以上、仕事関係のことに時間を割きたくない」という人がいてもおかしくないですよね。現時点でもらっている給料分の仕事ができればよくって、スキルアップとか成長に興味がないという人がいても、僕はぜんぜん否定的ではありません。

  • そもそも、給与額ってどうやって決めてますか?

    砂田

    基本は前職給与です。ウチに入ることで下がるというのはあんまり考えていなくて、その額を払ってでも入社して欲しいかどうかで考えます。その上で、職種ごとに求めているアウトプットのクオリティとスピードがあって、見合っていれば昇給もする、と。

    逆に、給与を下げることはしていないです。というのもアウトプットと給与が連動してるわけですから、「前はもっとできてたよね」という明らかな後退をしない限り、下げる理由が見当たらない。いきなり能力が落ちるって、これまでにいなかったし、あまり想像できません。

  • 入社時に限らず、社員の待遇を決めるときに悩んだりはしないですか?

    砂田

    決める際に悩むことはないですね。いまよりもうちょっと欲しいというなら、その人に対しての基準を示してあげるべきで、画一的な昇給とかは考えていないので。

    一対一の対話によって昇給する基準にチャレンジするのか、現状維持でいいのかを決める。そういう意味では、どうやって話したら伝わるかな、というのは悩むポイントにはなります。

  • 本人が希望して条件を満たせば昇給ということは、求めない人はずっと同じ額?

    砂田

    いや、それは違っていて。本人が求めてこなくても、成果を上げていれば上限なしで昇給させています。先ほどのクオリティとスピードが高くなったとわかれば、それだけ会社に対して貢献しているわけですから。

    でも最近わかったんですが、勝手に昇給させても喜ばれないんですよ、驚くほど。社長として、本当は喜んで欲しいんですよ。だけど、社員ってそういうものらしいので。喜ばないらしいですよ。

  • いや、そんなことはないでしょう。感情表現をしないのかもしれませんが。

    砂田

    どうなんでしょう。喜んでもらいたいな、と思って昇給とかを決めるんですけど、喜んでもらえた記憶がない。なのであるときから、「社員って喜ばないものなんだな」と思うようになりました。

    昇給っていうのは僕からしたら、「あなたには、これだけお支払いする価値があります。これからもよろしくお願いします」という意思表示なんです。仕事に対する対価ですから、いくらクチで「評価してるよ」と言ったところで、待遇が変わらなければ意味がない。

    僕自身が過去の会社で経験した嫌なことのひとつが、成果を出しても評価されない、つまり昇給しないということだったので、リアライズでは絶対にやりたくないと思っています。

    でも、喜ばれていない気がする。僕も人間なので、喜んでくれたら嬉しいですけどね。

    もっとも、全員が昇給を望んでいるわけではないという前提があるので、給与を上げることで喜ばれたいというのは、僕のエゴなのかもしれない。

  • ちょっと暗い感じになりましたが大丈夫ですか。
    従業員への評価として、確かにわかりやすいのは昇給とか待遇が良くなることですね。
    会社が赤字だとしたら、ない袖は振れないでしょうけど、順調に成長しているとしたら、それは社員のおかげ。
    だから昇給させることで正しい評価をしたいという、つまり感謝を形にしたいという気持ちなんでしょうね。