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メッセージ

VOL.06

Vol.6:社長に責任をとらせる社員を望む。

2020年にふたつの新サービス、2021年にはふたつの新規事業をスタートしたリアライズ。コロナ禍で苦しむ企業が多いなか、前例のない挑戦を継続している。年初にはじめたエコロジー分野のECサイト運営に続いて、夏に手掛けたのはフルーツサンド専門店。Webの世界を主戦場としてきたリアライズは、なぜリアル店舗での飲食事業に参入したのか。その理由を代表の砂田浩志に聞く。

INTERVIEW

  • Webサイトのアクセス解析レポート『SITE OFF』というWebサイトの買取サービスを2020年に開始して、翌年には生活雑貨ECの『Ecolatte(エコラテ)』という新規事業を立ち上げました。さらに2021年夏には、フルールサンド専門店『FRUITMINE』をリアル店舗としてスタートしました。まず、どうしてフルーツサンドだったのかを聞かせてください。

    砂田

    以前、雑談で「カフェをやりたい」と話したのを覚えていますかね。数年前から、カフェ業態に興味はありました。単純にカフェとか喫茶店で提供するコーヒーや軽食、さらには空間や接客まで含めた空気感が好きだったので。

    趣味、好み、みたいな要素がありましたが、もうひとつ、会社としての目的もありました。最近は特に、コロナの影響で在宅ワーク比率が高くなっています。リアライズ全体だと、90%以上が在宅ワークになっているくらい。残りの10%は、会社の方が集中できる人や必要性があるときだけ出社する社員。そして毎日、会社にいる僕です。

    感染拡大防止の観点と自衛、作業のし易さを一人ひとりが判断して、最適な場所で働いてもらえたらかまいません。出社を強制したくはないですしね。だからこそ、それぞれの判断で集まりたくなる場所を、会社以外の場所にもつくれないかと思っていました。

    他の社員と交流したい気分になったときに、仕事がはかどるし、気分が良いから足を運びたくなるような場所です。

  • それがカフェをやりたかったひとつの理由なんですね。社員たちが集まりたくなるような、いわばサードプレイスをつくりたかった、と。で、カフェではなくてフルーツサンドだったのは?

    砂田

    場所の問題がきっかけです。長いこと出店場所を探していたのですが、偶然に今のFRUITMINEの物件がみつかりました。横浜の馬車道にあるのですが、JRの関内駅からでも、みなとみらい線の馬車道駅からも5分かからない場所です。

    2021年は、YOKOHAMA AIR CABINというロープウェイが開業したり、横浜ゲートタワーや女神橋が完成するなど、観光スポットとして再び注目されることがわかっていました。

    立地や条件は満足いくものだったのですが、広さだけがカフェを開くには足りなかった。もう少し席数を増やせる物件ならカフェ業態で開業できたのですが、それは難しいなと思いました。

  • カフェに適した物件を探し続けるという選択もできたと思うのですが、それよりも別業態で挑戦することを選んだわけですね。

    砂田

    やってみたい欲が強かったのと、サードプレイスをつくるなら今だろう、と思ったんです。では物件の条件内でできることはなんだろう、楽しんで育てられる事業はなんだろうと考えた結果、フルーツサンドでした。僕自身が甘いものが好きというのも、大きく影響しています。やっぱり、興味のないことだと苦労はできないですし、続けられないですから。

  • フルーツサンドは流行りではありますが、ブームに乗っかるだけではなく、特徴のあるお店になってますね。イチゴが複数種類から選べたり、クリームも選べる。しかも、多くの同業と同じ作り置きではなく、お客さんとコミュニケーションしながらフレッシュなフルーツサンドを提供するという。

    砂田

    後発なのに、他と同じ作り置きの販売だけでは面白くないですよね。もちろん事業ですから、きちんと採算を取らないといけませんし。そこで、店長をはじめとするスタッフは、フルーツサンド屋さんのために採用をしました。

    調理はもちろんですが、丁寧かつ楽しい接客ができる人がみつかって、リアライズ第一号の飲食スタッフが入社したわけです。年齢も最年少ということで、これまでになかった新しい採用になりましたね。

    制作会社として若手を採用することも可能ですが、スキルが成熟していなければ、既存社員の負担が大きくなります。でも、若手社員も参加できる会社でありたい。だったら、Web制作と違うスキルの若手を仲間にしていったらどうだろ、と思ったんです。

    加えて、これは僕の主観まじりの持論ですが、飲食業界で活躍する人は他の仕事でも成果を出せるのではないかと考えています。丁寧な作業、人を幸せにするコミュニケーション、競合・流行・時代に敏感な情報収集力……。

    さまざまなスキルを発揮して成功するわけですから、能力が高いと思っています。その上で本人が望めば、飲食からWeb制作やディレクターの仕事にキャリアチェンジしてもらってもかまわない。

  • Webに挑戦したいという若手が増えるとしたら、既存社員に良い意味でのプレッシャーも与えられることになりますね。

    砂田

    それは考えていなくて、そもそもリアライズの既存社員たちはスキルが高いと思うので、そう簡単に脅かす存在にはならないです。むしろ中堅社員以上、彼らがさらに年長者になったときに、別の道を用意してあげたいという意識の方が強いです。

    僕自身も経験がありますが、顧客担当が若手の場合、年齢が離れすぎるとお互いがやりにくかったりします。本人のスキルと関係のないところで、仕事が進めにくかったり、続けるための障壁が出てくるかもしれない。

    そこでリアライズという会社が、Web制作だけではなく、自社ECや飲食の事業を並行していたらどうでしょう。長年やってきたWebでがんばる選択、EC事業に挑戦する選択、飲食で他店舗展開に挑戦するという選択。

    もちろん、別の会社に転職するとか独立するという選択もありますが、できればリアライズで働き続けてもらいたい。退職する以外にも多様な道を用意することと、進んだ道で本人と会社が納得しあえる状態をつくることが、僕がやるべき社長の仕事だと思います。

  • それが砂田さんの社長哲学、雇用者としての責任の取り方なんですね。

    砂田

    哲学というほどではないですが……。責任というのはありますね。当然の話ですが、社長の仕事は常々、責任を取ることだと理解しています。責任を取らない代表者なんて意味がないですし、僕の過去の体験からも、そういう会社にはいたくなかった。

    なので社員たちに思うのは、社長である僕の仕事として、責任を取らせて欲しいです。仕事の失敗・ミスは、会社として社員に任せたことですから、社長の砂田に責任があります。

    問題が起きた時点で、嘘をついたり隠したりせず、報告してくれたら嬉しいですね。教えてもらえないと、責任の取りようがないですから。

  • 「ミスをしたので責任とってください」と言ってくる社員がいたら面白いですね(笑)。
    新規事業について伺ってきましたが、結論としては、会社を成長させ続けて、社員には選択肢を用意する手段だったということになりますね。
    社員に強制・強要はしたくないけど、「道は用意するから自分の意思で選択してね」。
    それが、リアライズの社長としての責任の取り方だ、と考えていることがわかりました。